腸内環境を整えるカギは「多様な発酵性食物繊維」
日清製粉グループは、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究で、高食物繊維小麦粉が持つ新たな可能性を発見しました。この研究により、腸内細菌を介して短鎖脂肪酸(酪酸)が産生されるメカニズムの一端が解明されたんです。腸活に興味がある人は必見ですよ!

高食物繊維小麦粉が秘める力
今回の研究で特に注目されたのは、高食物繊維小麦粉に含まれる多様な「発酵性食物繊維」です。一般的な小麦粉と比べて約5倍もの食物繊維を含むこの小麦粉は、加工しやすく普段の料理にも使いやすいのが特徴。この高食物繊維小麦粉から作られたパンには、レジスタントスターチやアラビノキシランといった、腸内細菌が喜ぶ発酵性食物繊維がたっぷり含まれています。

短鎖脂肪酸(酪酸)を作るカギとなる腸内細菌
研究の結果、高食物繊維小麦粉に含まれる発酵性食物繊維を利用して酪酸を産生するには、「Agathobacter rectalis(アガソバクター レクタリス)」という腸内細菌が重要な役割を果たす可能性が確認されました。さらに、このAgathobacter rectalisはレジスタントスターチを利用して増殖し、アラビノキシランを利用して酪酸を産生すること、そしてビタミンB5を加えることで酪酸の産生がさらに促進されることが示唆されています。
発酵性食物繊維ってどんなもの?
発酵性食物繊維は、消化・吸収されずに大腸まで届き、腸内細菌のエサとなる食物繊維のこと。腸内細菌がこれを食べると、酢酸や酪酸などの有益な短鎖脂肪酸が作られ、腸内環境の改善に役立つことが知られています。ちなみに、毎年5月18日は「発酵性食物繊維普及の日」として制定されているんですよ。
研究内容を詳しく見てみよう
今回の研究では、高食物繊維小麦粉に含まれる発酵性食物繊維が、腸内細菌によってどのように利用され、酪酸が産生されるのかが詳しく調べられました。
ヒト試験で酪酸と腸内細菌の関係を解析
高食物繊維小麦粉を使ったパンを摂取した人の便を分析したところ、摂取前に腸内細菌Agathobacter rectalisの占有率が高い人ほど、摂取後の便中酪酸濃度も高いという相関関係が認められました。Agathobacter rectalisの占有率が1%以上の方に限定して見ると、高食物繊維小麦粉のパンを摂取した群は、一般的な小麦粉のパンを摂取した群と比べて便中酪酸濃度が有意に高かったそうです。

この結果から、高食物繊維小麦粉の多様な発酵性食物繊維を摂ることで酪酸が作られるには、Agathobacter rectalisがとても大切だということが分かります。
培養試験でメカニズムを解明
Agathobacter rectalisを使った培養試験では、以下のことが明らかになりました。
- レジスタントスターチを利用してAgathobacter rectalisが増殖する。
- アラビノキシランを利用して酪酸の産生が増加する。
- ビタミンB5を加えることで酪酸産生がさらに促進される。

これらの結果は、高食物繊維小麦粉に含まれる複数の発酵性食物繊維が活用されることで、腸内環境の改善に役立つ短鎖脂肪酸(酪酸)が作られるという、多様な発酵性食物繊維摂取の重要性を示唆しています。
今後の展望
日清製粉グループは、この研究で明らかになったメカニズムを手がかりに、今後も高食物繊維小麦粉が持つ健康効果の解明をさらに進めていくとのことです。個人の腸内環境に合わせた最適な活用方法の提案や、健康機能を持つ商品づくりにも取り組んでいくそうですよ。「おいしさ」を大切にしながら、「“おいしい”の先に健康がある世界」の実現を目指しているそうです。
研究者の声

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長 國澤 純 氏
「本研究は、食物繊維の捉え方に新たな視点を提示し、特定の腸内細菌が機能発現に関与する可能性を示したものです。今後、腸内細菌を指標に、発酵性食物繊維を中心とした適切な食材を選択できる時代の到来が期待されます。」
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 研究員 池田 祐香 氏
「本研究のように同じ食品を摂取しても個々の栄養状態や腸内細菌叢などの要因により、その健康効果には個人差が生じます。今後もそのメカニズム解明を通じて精密栄養学の基盤構築を図り、人々の健康維持・増進への貢献を目指します。」
株式会社日清製粉グループ本社 R&D・品質保証本部 基礎研究所 研究員 豊田 一希
「本研究成果は、精密栄養学の観点から個々人の特性に応じた発酵性食物繊維の最適な活用に繋がるものと考えています。今後も、高食物繊維小麦粉を通じて、科学的根拠に基づく健康価値の提供に取り組んでまいります。」
関連する学会発表情報
この研究成果は、以下の学会でも発表されています。
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日本農芸化学会2026年度京都大会(開催日:2026年3月9日~12日)
発表演題:高アミロース小麦粉由来発酵性食物繊維による酪酸産生メカニズムの解明 -
第80回日本栄養・食糧学会大会(開催日:2026年5月15日~17日)
発表演題:Agathobacter rectalisによる高アミロース小麦粉由来発酵性食物繊維を利用した酪酸産生量を向上させる手法の検討
用語説明
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短鎖脂肪酸: 人の腸に存在する腸内細菌が食物繊維を食べて産生する成分で、腸の働きを整えるほか、全身の健康維持に関わることが知られています。
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レジスタントスターチ: 小腸で消化されず、大腸まで届くでんぷんのことです。
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アラビノキシラン: 主にイネ科植物に多く含まれる発酵性食物繊維の一種です。
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精密栄養学: 遺伝的な要因や生活習慣、腸内細菌叢(腸内フローラ)を含む腸内環境などの影響を踏まえ、健康の維持に必要な栄養を各個人に提供する、次世代の栄養学として注目されています。

